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◇田舎暮らし(166) <久し振りの雪かき> 【中野信吾】
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久し振りに汗をかいた。歳が明けてから、田舎の家を見回りしてこなくてはと気にしていたのだが、なかなか実現できなかった。それも細かな用事が重なり、帰省に利用する高速道が混雑している事情もあった。ようやく日時の調節ができたので慌ただしく行ってきた。二日前に降った雪は峠の麓あたりで日影に残っていた。峠にさしかかると道端は除雪されていたが、日影斜面は解けずそのまま残っていた。峠を越えても同じような状態が続いている。峠の反対側の上州とで寒暖の差は大きい。信州の寒さは上州の寒さよりも厳しい。だから日影などはそのまま根雪となってしまっている。最近の道路は融雪剤を撒くので凍結せず車の通行は楽になった。しかし、一歩脇道にそれると除雪されないか、踏み固められたつるつるの道となってしまう。それも日中は少し解けても夜間の冷え込みで凍結しアイスバーンになる。帰省して家の周りの除雪作業で一汗かいたということだった。
屋外は一面の雪景色。雪の降らない地方ではこの時期でも時々農作業をしている人の姿を見かける。だが、ここ信州ではとてもできない。寒さが厳しく土は凍結している。家屋内で春に向けての準備か何かの作業をするぐらいだ。園芸農家はリンゴや桃、葡萄、梅、杏子などの剪定作業をこの時期に行う。今年は暖冬傾向だといわれていたが、暦通り「寒の入り」から一番の寒さになった。水道管など凍結防止策はしているが、無人の家だと冷え切ってしまい、部屋の中に入れて保温対策をしておいた野菜までも、がちがちに凍みてしまう。そんな経験を何度もしてきた。無人で火の気がない部屋などは暖房を入れてもなかなか温まらない。雪が少ない方が冷え込みは厳しい。かえって雪が多い方が暖かいといわれている。
雪のあるところで移動するのにも制約が大きい。集落の人口減少は人の往来を欠き、踏み固められた雪道も少なくなってしまった。夜間などわずかに残る道の凹凸を雪明りを頼りに歩く風情もなくなった。雪は交通への阻害が大きいが、レジャーは別だ。
今まで田舎への移動は車に頼ってきた。昨今の高齢者の運転事故のニュースを聞くたびに身が縮む思いがする。高齢者であることを自覚し、認知のテストに受かっても、体調や運転する時間帯、道路状況など考慮して、一層慎重に安全運転を心掛けるよう努力したい。
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◇コラム知技研(47) <本棚からの一冊(8)> 【遠藤恭一】
=『それでも日本人は「戦争」を選んだ』加藤陽子著=
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大分前から本屋の書棚に並んでいた本である。然しその分厚さに若干たじろいで手に取るのが遅くなった。単行本ではなく昨年夏に文庫版になってからやっと読んでみようと決意して、でも500ぺージもあるので時間が掛かろうと覚悟してページをめくった。
然し乍ら、手に取ると止まらず3日間ほどで読了した。明治の日清戦争から話が始まり、太平洋戦争に至る経緯が庶民の目線からも離れず、また政治家、外交官、あるいは海外の歴史家の眼にどう映ったかも含め過不足なく述べられている。著者は近代史が専門の東大教授である。
まず、この本の構成が神奈川県の有名私立受験校である栄光学園の中・高生向け5日間の「連続特別授業」の講義を基としている。講義の途中で著者は生徒に質問を投げかける。
多分に緊張感のある講義になっていると考えれるし、読者も一緒に質問に答えることを求められるのである。
歴史学とはどんな意味があるのか? 過去の戦争においてもその前に起きた歴史的な事実や苦い経験がその後の戦争遂行に大きな影響を与えることになった例を挙げて説明する。例えば、第一次世界大戦の終結は休戦協定であった。米国提案の14箇条の休戦内容は比較的穏健な内容であり独逸は受け入れたが、その後のパリ対独逸講和会議では米国提案の理想主義的な講和案は欧州主要国の反対で葬り去られ、独逸側は休戦には応じなければ良かったとの強い不満が残った。その後ヒットラー政権誕生への道を開いた例であるという。第二次世界大戦においては、この苦い経験が、すでに全く抵抗できないような独逸、イタリア、日本との戦争終盤においても米国が絶対的に「無条件降伏」に固執した歴史の教訓を示す典型的な例であるという。一方、米国は第二次世界大戦下の中国で蒋介石の国民党を支援したにも拘わらず結局は「漁夫の利」の様に中国共産党の毛沢東に政権を最終的に渡すこととなり、この苦い経験がベトナム戦争への深入りの背景に繋がったとみる。即ち、政策を決定する者は強いプレシャーの中で歴史の中で類推例を必死に求める。歴史から学ぶ以外に政策決定の題材はないと言い切る。ここに歴史の意味深さがあると述べる。
日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、満州事変、日中戦争の拡大、太平洋戦争と続く戦いに暮れる明治から昭和に掛けての我が国の政治、経済、社会の動きを庶民の目線、あるいは知識人の表明、あるいは当事者である政治家、経済界の人間のそれぞれの立場から戦争に至る経緯を立体的且つ複合的に捉えている。しかも日本側からの見解だけでなく戦争相手国の政治家や経済界、庶民の観点からもその戦争がどう見られていたかの判断を合わせ語られている。
正に講義を聞く受講生・読者に考えさせるもので、決してこう考えるべきと指示している内容ではない。日本の近隣諸国との間で先の大戦の評価を巡っていまだ紛争が継続しているという事実はやはり過去を解明する努力がまだ十分になされていないことの証明でもあろう。
次世代を担う人材に「なぜ自国の近代史を、特になぜ戦争に至ったか、あるいは敗戦の原因と無謀な戦争に突入していった経緯」をより深く教え、考えさせる授業をしてこなかったかについては今も大きな課題が残る。
英国の中高校生向けの歴史教科書には「帝国の衝撃」とのタイトルで英国のインド支配やアフリカで実際に英国が行ってきた残虐行為と同時にインドの近代化や人間の尊厳についての開明的な部分にも視線を向けバランスの良い「考えさせる」授業用の教科書となっている点、まだまだ我が国の歴史教育の進展の余地はあると考えられる。 以上
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◇宇宙川柳 ・手前の太道(111) 【家元東柳】
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芭蕉の築いた俳句の世界「奥の細道」をも包摂した広大で自由な川柳宇宙を築こうと思い、「手前の太道(ふとみち)」としています。
夕日地に落ちつぶれた乳房
うさぎ小屋うさぎが減って小屋余り
さとうきび絞れば黒き血が流る
どの眼鏡どれも似合わぬ顔のせい
名医待たせて 重くし治す
我が人生つとめたゆまず果実なし
ねえスマホもみ手の孫はポケモンゴー
捜しても愛は身のそば見えぬだけ
今どきはソコソコの愛で子は育つ
めおとの差赤ちゃん袋と如意棒か
★おまけの戯れ句、狂句、破礼句
ツィートで世界中をトランプリン
一人旅寝呆気飛び下り無人駅
オトクデスはたいてい店がお得です
呆気ぬようボケボケボケのど突き合い
生れ変り逢って貴女はどなたです
★謎解き川柳
歯と足の二匹の虫は痛し痒し (乞うリメール)
★今月のリメール賞・遠藤智様(下記DVDⅠ、サテンドール盤をお送りします 感謝)
「年老いて地球の自転急速に」家元12月号
お言葉ですが、公転も速くなりました。(遠藤智様)
「特快に往復飛び乗り二度通過」家元12月号
この二句身にしみる(渡辺忠様)
尚、12月号のリメール賞の高橋圭太郎様にもDVDⅠをお送りします 感謝)
★DVDⅡ発売のお知らせ
この度私の9月のサントリーでのリサイタルも鈴木泉先生にDVDⅡを製作していただきました。購入を御希望の方は御申込み
下さい。頒布価はⅠ、Ⅱとも1,500円で2枚で2,000円です。
いつ迄も待つわ~。
家元東柳 連絡先掲載サイト
http://www.higaship.com
㈱東綜合設計事務所 東 直彦
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