2019年3月号
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
◇ 田舎暮らし(190) <ヒマラヤ街道見聞録3> 【中野信吾】
=ルクラの飛行場=
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この飛行場は標高2840mにある。山岳地方への飛行は天候の影響を受けやすく、欠航が多いと聞く。乾季を利用したおかげで、カトマンズでもルクラでも欠航には遭わなかった。気流の関係で遅延があったぐらいだろうか。カトマンズ(標高約1330m)のトリプバン空港は国内線が同居している。この国内線の待合室に猿が三匹ばかり天井裏から餌を求めて降りてきた。エベレスト遊覧飛行に参加するために早朝のチェックインで人影も少なかったせいでもあるようだが。猿の行動には一切干渉せず。これも日常茶飯事のようで皆が目撃するだけだ。ヒンズー教では猿は神聖視されているせいもあるからか。
翌朝は国内線でルクラへ。この飛行場はパイロット仲でも一番怖い飛行場だという。滑走路は山の斜面に沿って460mを上るようにして勢いを落として着陸する。離陸は逆に谷底に向かって下りながらの飛行となる。飛行機は傾斜で加速させ谷風を受けて浮上するのか。その先端は深い谷底だ。正面は切り立つ山が聳えている。水平の滑走路ではない。乗客の荷物の重量は15㎏と制限されている。目の前を飛び立つ飛行機を見ていると、これだけの悪条件を備えていながら運用されている空港は他にあまり聞かない。熟練しているパイロットでも相当のプレッシャーがかかっていることだろう。
エベレスト街道ともいわれているこの街道はルクラからカラ・パタール(5545m)の終点まで標高差が2705mある。その途中のナムチェ(3440m)の背後にあるシャンボチェの丘(3750m)までは、街道の半分にも満たない距離なのだがトレッキング客で賑わう。この丘でエベレストが眺望できるビューポイントに日本人が建てた「エベレスト・ビュー・ホテル(3880m)」がある。余談だが、帰路ルクラのロッジ泊で朝食後、飛行機の出発時までの間に、ニコニコして挨拶を日本語でする老人の訪問を受けた。なんと二、三日前まで宿泊していたエベレストビューのオーナーだった。娘さんとご一緒で、彼女が企画したアメリカ人の結婚式をビューホテルで行うためにこれから行くのだという。お互い時間待ちのひと時を、久しぶりに日本語で会話できた喜びは代えがたく感無量だったようだ。そのうえ故郷の話まで飛び出し、お互いが同郷・同時代の誼で、上田盆地・佐久平から上田松尾・野沢北など高校時代の話にまで及んだ。同氏の事績については、中央公論新社から「ヒマラヤのドン・キホーテ――ネパール人になった日本人・宮原巍の挑戦」 根深誠 著 という書籍が上梓されている。ぜひご参照されたい。
トレッキング街道で集落を通過するとき、時々道がきれいに掃き清められて水が打たれているところがある。「糞害」は前にも触れたが、街道全体に普及するなら大いに歓迎するが、あってもこれは自分の家の前だけ。この糞がヤクなどのものであれば、よく乾燥させてストーブの薪代わりに使う。良く乾けば臭いはしない。11月も下旬となれば朝晩の冷え込みは大きくなる。時には暖房が欲しい時もある。だが、ストーブに火が入るのはせいぜい夕方の食事の時間帯ぐらいで,寒くても多少の我慢だ。日本の山小屋ならばサービス精神旺盛で、宿泊客をもてなす術も心得ている。これからの客に対応して観光客を多く呼び寄せる時が遠からずやってくるだろう。
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◇よろず評論(54) <生まれ育った地域を訪ねて3> 【鈴木迪雄】
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今年の正月休みは10日もあったので、自分が生まれ育った環境を調べてみる。
1. 父と母の故郷
父と母の故郷は、山口県防府市三田尻である。戦時中、母と私と妹三人が疎開をした。在学した中学が米軍機の機銃掃射を受けた直後、父の決断で郷里三田尻へ疎開したが、三田尻の海岸へ妹と遊びに行ったとき、近くの飛行場への機銃掃射で再び怖い危ない経験をした。
2. 多々良中学
昭和20年3月、三田尻へ疎開し、多々良中学で学んだ。曹洞宗=第四中学林と呼ばれた禅坊主の養成校。同級生は高等小学校を卒業して入学するので三才は年上。僅か一年の在学だったが、曹洞宗の学校のため宗教教育の学科と「宗乗」があり、坐禅も教わった。3才の同級生に交じって学徒動員で特攻隊の飛行場建設や特攻隊の飛行服のガラス綿の聖俗に携わる。終戦の日に工場の講堂で天皇の玉音を聞いて涙を流した。
3. 平郡島
鈴木家の歴史を調べてみると、平宗盛追討の木曽義仲に味方した紀伊國の藤代城主の鈴木三郎が京都で敗戦。この折、義仲の幼君、部栗丸(ヘグリマル)を擁して山伏となって一族16人と共に四国宇和へ逃れ、文治元年9月、平郡島におちのびたと言われる。
平郡という名称は、部栗丸をもじったもの。平郡島は、山口県柳井湊から三時間。東西に細長い周囲28キロ、半農半漁の島だ。
4. YOUゆう文化の町づくり
私は65才で定年となり、以降90才までは地域活性化に取り組むつもり。人々は勇躍して自らが町を興す気概に燃え、老若男女が相和して内外の人々を友とし、悠々たる自然の恵みを分かち合い、多くの人々が安全で快適に遊び、住まい、生活できる豊饒の町を築くことを目標としている。
自然と生活・産業の調和w通して、豊かな環境を創造し、豊かな環境を「友」として「遊び」、心の「優(ゆたかさ)」と「勇」気を育み、新しい生活の糧(産業)を誘い、「悠」然たる町の文化を築きたい。(了)
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◇コラム知技研(73) 「本棚の一冊から (33) 」 【遠藤恭一】
=『ハロー・ワールド』藤井大洋著。=
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著者の名前を知っている方は最新のITにも精通していると思われる。正直あまり馴染のない著者である。藤井氏は47歳、IT企業での勤務経験を持つ作家で最初の本は電子書籍で自費出版されたものと言う。この著作が評判を呼んで文壇に登場。今回の「ハロー・ワールド」は5つの短編から構成されているSFである。近未来のインターネット全盛時代の中で国家や大企業の情報統制と戦う若者を主人公に世界の様々な土地で展開される物語である。
この小説に登場する小道具は全てIT関連のシステムがベースとなっている。この為そのシステム及びその用語を咀嚼できないと内容が理解できない。私は残念ながらITシステムや使用の用語が充分理解できたわけではないことから、その意味するところも良く理解できたとは言えない。最近のTVドラマでも小道具にスマートフォンやシステムがあらゆる場面に登場する様である。現代の人々はこうした内容を直ぐに理解できるのであろう。
この本の主人公の文椎は専門を持たない「ITの何でも屋」エンジニアである。その武器はITテクニックとIT分野に精通した仕事仲間、彼の持つ正義感。仲間と一緒にチームで開発した広告ブロッカーアプリ〈ブランケン〉が、突然インドネシア方面で爆発的に売れ出した。広告ブロッカ-とはネット上の広告を遮断する装置で、〈ブランケン〉ができるのは政府広報を消すアプリだ。遠くインドネシアの島で何が起こっているのか。モニタリングを通じて彼らはとんでもない情報を掴んでしまった。『文椎は第二のエドワード・スノーデンなるか?』といった内容である。5つの短編舞台は、最初が上記のインドネシア、2つ目が米国カルフォルニア州の砂漠での出来事。それはアマゾン社のドローンで自動配達する荷物がGPSの不都合で目的地に到着する前に突然砂漠の真ん中に集中的に残されていく物語だ。
3つ目がバンコク。4つ目が東京、最後が中国である。特に最後の中国を舞台とした物語「めぐみの雨が降る」は仮想通貨の話しである。マレーシアでのITセミナーから話が始まり、仮想通貨の歴史や現状が語られ、中国での世界の仮想通貨の覇権を握る為の構想・未来について話が進む。5つの物語を読み終わるとなんとなくICTの問題点が見えて来る様に思える。然し、どうもこの本の意図するところが単なるITの近未来を読者に想像させるだけに終わってしまっている様に思える。それでも良いのかもしれないが小説とは何らかの余韻というか、心に残る点があってしかるべきではないかと思う。私はこの本をどの範疇に入れたらよいのかが判らない。なぜなら小説が訴える深層的な意味がどの辺にあるのか判らず、先程も書いたIT用語も充分理解できていないことが著者が訴えることを把握できない理由かもしれない。著者は最近「東京の子」というオリンピック後の東京の若者たちの近未来を描くSFを発表している。これを読んでみたいと考えているこの頃である。 つづく
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◇宇宙川柳 ・手前の太道(137) 【家元東柳】
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芭蕉の築いた俳句の世界「奥の細道」をも包摂した広大で自由な川柳宇宙を築こうと思い、「手前の太道(ふとみち)」としています。
優先席狸も狐も近頃スマホ
嗚呼残念アポ電強盗純国産
河馬欠伸まじまじ見入る歯科医かな
勿体無いとしようがないは日本の心
有識者とは異を唱えない者か
幸せは帰る処で待っている
不祥事に完璧慣れた国と民
廃校で子供の自分と擦れ違う
嬉しいと言うと母も嬉しいと
金婚とは鐘二つのことねと妻が言い
★おまけの戯れ句、狂句、破礼句
統計は忖度でなく電卓で
ちょっぴりで夜中起こすなこの俺を
駅トイレ「垂れてもトイレ」と書いてある
高齢者後期の次は末期かな
我が家には何にも鑑定団よ来い
★今月の投句コーナー
原発の儲け山分けツケ税金(藤原恵一様)
天高く銀明水を聞こし召す(藤原恵一様)
はや黄沙雨はよこさず西の空(藤原恵一様)
蒸し返し骨の髄までしゃぶる国(西野進一様)
心愛ちゃんの渡った世間鬼ばかり(西野進一様)
育毛剤全部使えば毛獣か(西野進一様)
★「オペラと歌曲の夕べ」の御礼
3/9(土)18:30よりサントリーホール・ブルーローズ
での「ありどおろコンサート」の後半に3曲、オペラの
アリア1曲と新旧カンツォーネナポリターナ3曲を歌い
沢山のブラボーをありがとうございました。
★世田谷区クリックフリーステージの御案内
4月28日(日)15:00~18:30三茶キャロットタワーの
シアタートラム1Fで今年も世田谷区主催の入場無料の音楽祭の
16:50頃ピアノとマンドリンで3曲歌います。是非聞きに来て
下さい。大変バラエティに富んだ楽しいコンサートです。
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㈱東綜合設計事務所
東京都中野区中野3-2-1 リバース中野601
TEL:03-3384-9301 FAX:03-3384-9380
E-mail:higaships@siren.ocn.ne.jp
URL :http://www.higaship.com
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◇ 田舎暮らし(190) <ヒマラヤ街道見聞録3> 【中野信吾】
=ルクラの飛行場=
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この飛行場は標高2840mにある。山岳地方への飛行は天候の影響を受けやすく、欠航が多いと聞く。乾季を利用したおかげで、カトマンズでもルクラでも欠航には遭わなかった。気流の関係で遅延があったぐらいだろうか。カトマンズ(標高約1330m)のトリプバン空港は国内線が同居している。この国内線の待合室に猿が三匹ばかり天井裏から餌を求めて降りてきた。エベレスト遊覧飛行に参加するために早朝のチェックインで人影も少なかったせいでもあるようだが。猿の行動には一切干渉せず。これも日常茶飯事のようで皆が目撃するだけだ。ヒンズー教では猿は神聖視されているせいもあるからか。
翌朝は国内線でルクラへ。この飛行場はパイロット仲でも一番怖い飛行場だという。滑走路は山の斜面に沿って460mを上るようにして勢いを落として着陸する。離陸は逆に谷底に向かって下りながらの飛行となる。飛行機は傾斜で加速させ谷風を受けて浮上するのか。その先端は深い谷底だ。正面は切り立つ山が聳えている。水平の滑走路ではない。乗客の荷物の重量は15㎏と制限されている。目の前を飛び立つ飛行機を見ていると、これだけの悪条件を備えていながら運用されている空港は他にあまり聞かない。熟練しているパイロットでも相当のプレッシャーがかかっていることだろう。
エベレスト街道ともいわれているこの街道はルクラからカラ・パタール(5545m)の終点まで標高差が2705mある。その途中のナムチェ(3440m)の背後にあるシャンボチェの丘(3750m)までは、街道の半分にも満たない距離なのだがトレッキング客で賑わう。この丘でエベレストが眺望できるビューポイントに日本人が建てた「エベレスト・ビュー・ホテル(3880m)」がある。余談だが、帰路ルクラのロッジ泊で朝食後、飛行機の出発時までの間に、ニコニコして挨拶を日本語でする老人の訪問を受けた。なんと二、三日前まで宿泊していたエベレストビューのオーナーだった。娘さんとご一緒で、彼女が企画したアメリカ人の結婚式をビューホテルで行うためにこれから行くのだという。お互い時間待ちのひと時を、久しぶりに日本語で会話できた喜びは代えがたく感無量だったようだ。そのうえ故郷の話まで飛び出し、お互いが同郷・同時代の誼で、上田盆地・佐久平から上田松尾・野沢北など高校時代の話にまで及んだ。同氏の事績については、中央公論新社から「ヒマラヤのドン・キホーテ――ネパール人になった日本人・宮原巍の挑戦」 根深誠 著 という書籍が上梓されている。ぜひご参照されたい。
トレッキング街道で集落を通過するとき、時々道がきれいに掃き清められて水が打たれているところがある。「糞害」は前にも触れたが、街道全体に普及するなら大いに歓迎するが、あってもこれは自分の家の前だけ。この糞がヤクなどのものであれば、よく乾燥させてストーブの薪代わりに使う。良く乾けば臭いはしない。11月も下旬となれば朝晩の冷え込みは大きくなる。時には暖房が欲しい時もある。だが、ストーブに火が入るのはせいぜい夕方の食事の時間帯ぐらいで,寒くても多少の我慢だ。日本の山小屋ならばサービス精神旺盛で、宿泊客をもてなす術も心得ている。これからの客に対応して観光客を多く呼び寄せる時が遠からずやってくるだろう。
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◇よろず評論(54) <生まれ育った地域を訪ねて3> 【鈴木迪雄】
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
今年の正月休みは10日もあったので、自分が生まれ育った環境を調べてみる。
1. 父と母の故郷
父と母の故郷は、山口県防府市三田尻である。戦時中、母と私と妹三人が疎開をした。在学した中学が米軍機の機銃掃射を受けた直後、父の決断で郷里三田尻へ疎開したが、三田尻の海岸へ妹と遊びに行ったとき、近くの飛行場への機銃掃射で再び怖い危ない経験をした。
2. 多々良中学
昭和20年3月、三田尻へ疎開し、多々良中学で学んだ。曹洞宗=第四中学林と呼ばれた禅坊主の養成校。同級生は高等小学校を卒業して入学するので三才は年上。僅か一年の在学だったが、曹洞宗の学校のため宗教教育の学科と「宗乗」があり、坐禅も教わった。3才の同級生に交じって学徒動員で特攻隊の飛行場建設や特攻隊の飛行服のガラス綿の聖俗に携わる。終戦の日に工場の講堂で天皇の玉音を聞いて涙を流した。
3. 平郡島
鈴木家の歴史を調べてみると、平宗盛追討の木曽義仲に味方した紀伊國の藤代城主の鈴木三郎が京都で敗戦。この折、義仲の幼君、部栗丸(ヘグリマル)を擁して山伏となって一族16人と共に四国宇和へ逃れ、文治元年9月、平郡島におちのびたと言われる。
平郡という名称は、部栗丸をもじったもの。平郡島は、山口県柳井湊から三時間。東西に細長い周囲28キロ、半農半漁の島だ。
4. YOUゆう文化の町づくり
私は65才で定年となり、以降90才までは地域活性化に取り組むつもり。人々は勇躍して自らが町を興す気概に燃え、老若男女が相和して内外の人々を友とし、悠々たる自然の恵みを分かち合い、多くの人々が安全で快適に遊び、住まい、生活できる豊饒の町を築くことを目標としている。
自然と生活・産業の調和w通して、豊かな環境を創造し、豊かな環境を「友」として「遊び」、心の「優(ゆたかさ)」と「勇」気を育み、新しい生活の糧(産業)を誘い、「悠」然たる町の文化を築きたい。(了)
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◇コラム知技研(73) 「本棚の一冊から (33) 」 【遠藤恭一】
=『ハロー・ワールド』藤井大洋著。=
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著者の名前を知っている方は最新のITにも精通していると思われる。正直あまり馴染のない著者である。藤井氏は47歳、IT企業での勤務経験を持つ作家で最初の本は電子書籍で自費出版されたものと言う。この著作が評判を呼んで文壇に登場。今回の「ハロー・ワールド」は5つの短編から構成されているSFである。近未来のインターネット全盛時代の中で国家や大企業の情報統制と戦う若者を主人公に世界の様々な土地で展開される物語である。
この小説に登場する小道具は全てIT関連のシステムがベースとなっている。この為そのシステム及びその用語を咀嚼できないと内容が理解できない。私は残念ながらITシステムや使用の用語が充分理解できたわけではないことから、その意味するところも良く理解できたとは言えない。最近のTVドラマでも小道具にスマートフォンやシステムがあらゆる場面に登場する様である。現代の人々はこうした内容を直ぐに理解できるのであろう。
この本の主人公の文椎は専門を持たない「ITの何でも屋」エンジニアである。その武器はITテクニックとIT分野に精通した仕事仲間、彼の持つ正義感。仲間と一緒にチームで開発した広告ブロッカーアプリ〈ブランケン〉が、突然インドネシア方面で爆発的に売れ出した。広告ブロッカ-とはネット上の広告を遮断する装置で、〈ブランケン〉ができるのは政府広報を消すアプリだ。遠くインドネシアの島で何が起こっているのか。モニタリングを通じて彼らはとんでもない情報を掴んでしまった。『文椎は第二のエドワード・スノーデンなるか?』といった内容である。5つの短編舞台は、最初が上記のインドネシア、2つ目が米国カルフォルニア州の砂漠での出来事。それはアマゾン社のドローンで自動配達する荷物がGPSの不都合で目的地に到着する前に突然砂漠の真ん中に集中的に残されていく物語だ。
3つ目がバンコク。4つ目が東京、最後が中国である。特に最後の中国を舞台とした物語「めぐみの雨が降る」は仮想通貨の話しである。マレーシアでのITセミナーから話が始まり、仮想通貨の歴史や現状が語られ、中国での世界の仮想通貨の覇権を握る為の構想・未来について話が進む。5つの物語を読み終わるとなんとなくICTの問題点が見えて来る様に思える。然し、どうもこの本の意図するところが単なるITの近未来を読者に想像させるだけに終わってしまっている様に思える。それでも良いのかもしれないが小説とは何らかの余韻というか、心に残る点があってしかるべきではないかと思う。私はこの本をどの範疇に入れたらよいのかが判らない。なぜなら小説が訴える深層的な意味がどの辺にあるのか判らず、先程も書いたIT用語も充分理解できていないことが著者が訴えることを把握できない理由かもしれない。著者は最近「東京の子」というオリンピック後の東京の若者たちの近未来を描くSFを発表している。これを読んでみたいと考えているこの頃である。 つづく
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◇宇宙川柳 ・手前の太道(137) 【家元東柳】
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
芭蕉の築いた俳句の世界「奥の細道」をも包摂した広大で自由な川柳宇宙を築こうと思い、「手前の太道(ふとみち)」としています。
優先席狸も狐も近頃スマホ
嗚呼残念アポ電強盗純国産
河馬欠伸まじまじ見入る歯科医かな
勿体無いとしようがないは日本の心
有識者とは異を唱えない者か
幸せは帰る処で待っている
不祥事に完璧慣れた国と民
廃校で子供の自分と擦れ違う
嬉しいと言うと母も嬉しいと
金婚とは鐘二つのことねと妻が言い
★おまけの戯れ句、狂句、破礼句
統計は忖度でなく電卓で
ちょっぴりで夜中起こすなこの俺を
駅トイレ「垂れてもトイレ」と書いてある
高齢者後期の次は末期かな
我が家には何にも鑑定団よ来い
★今月の投句コーナー
原発の儲け山分けツケ税金(藤原恵一様)
天高く銀明水を聞こし召す(藤原恵一様)
はや黄沙雨はよこさず西の空(藤原恵一様)
蒸し返し骨の髄までしゃぶる国(西野進一様)
心愛ちゃんの渡った世間鬼ばかり(西野進一様)
育毛剤全部使えば毛獣か(西野進一様)
★「オペラと歌曲の夕べ」の御礼
3/9(土)18:30よりサントリーホール・ブルーローズ
での「ありどおろコンサート」の後半に3曲、オペラの
アリア1曲と新旧カンツォーネナポリターナ3曲を歌い
沢山のブラボーをありがとうございました。
★世田谷区クリックフリーステージの御案内
4月28日(日)15:00~18:30三茶キャロットタワーの
シアタートラム1Fで今年も世田谷区主催の入場無料の音楽祭の
16:50頃ピアノとマンドリンで3曲歌います。是非聞きに来て
下さい。大変バラエティに富んだ楽しいコンサートです。
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TEL:03-3384-9301 FAX:03-3384-9380
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