2019年9月号
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◇古希のたわごと(5) =ゴルフ練習 中野時代その2= 【石川啓司】
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前回では、手打ちといわれるスイングの中で『キャスティング』を自覚したことで、それを矯正したいと、ゴルフ練習の必要性に目覚めたことを述べました。
自分のスイングの悪さ、ミスの原因の一つは、まずキャスティングにあるということをはっきりと分かったことが、中野時代の収穫でした。
ところが、何年かそこでレッスンを受けたのですが、『キャスティング』のスイングは一向に治らない。
クラブの先がボールに届く前に手を使ってしまう。結果として、ザックリ、トップが起こる。手は器用だから、手が出しゃばるとろくでもない。クラブの先の行方よりボールの行方が気になる。
バックスウイングからダウンスイングまで手と身体がばらばら、手の解きが早い、タメが出来ていない。
ボールを打った瞬間に、目はボールを追うから、ヘッドアップする。それでインパクト時にヘッドの方向性がまちまちだから、スライス、フックが起こる。ミスの続出だ。
「幸運」を求めてゴルフを続ける。チップインをするかも知れない。ホールインワンをするかも知れない。ボールの行方は、「ボールに聞いてくれ」という運に頼るの世界では、120切りはおぼつかない。
ホールに近づけたいという一心で、強く打つ。バランスを崩して、ミスをする。ショートの池越えでつまずく。寄せがぜんぜん。パットが入らない。それでは、120を切れない時代が続く。
「ボールを曲げたくない」という願望、ミスをしたくないという気持ちがある。これを「真っ直ぐ打つ」にはどうするか、この技術を会得せずに、毎回、ミスをしないようにするという固定概念に縛られては、ラウンドは楽しくなく、ミスを呪い、運を待ち望む。これでは、上達の楽しみから、縁の遠い話になります。
ゴルフは、より遠くに飛ばすだけのスポーツではありません。狙ったところに飛ばすスポーツです。方向性と距離をコントロールすることが必須であるということです。
そこまで気がついていて、ではどうするか。真っ直ぐに飛ばすことが出来るよう練習することです。
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◇よろず評論(60) < 三陸・大船渡夏まつり > 【鈴木迪雄】
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「海の祭典」とも呼ばれる岩手県大船渡市の夏を代表する一大イベント。三陸・大船渡夏まつりが8月3日に行われた。
東日本大震災からの復興が進むなか、9年ぶりに大船渡の中心市街地に戻ってきた夏まつり。地元の人々は中心部で再び開催できることを喜びながらメーン行事の市民道中踊りや花火大会などを楽しみ、地域の元気とこれまでの感謝を発信した。
東日本大震災前、まつりの会場は大船渡駅前の目抜き通りで行われていた。しかし、同駅周辺地区は津波で甚大な被害を受けたため同駅付近の野々田岸壁港湾道路、市魚市場前を利用してきた。こうしたなか、今年3月末、大船渡周辺地区で行われていた土地基盤工事が完了。同まつり実行委は、9年ぶりに中心市街地で開催することを決めた。
今年の8月2日、海上七夕船団による大船渡湾内巡航で開幕。二日目の3日は、青空が広がる夏らしい天候と暑さのもとでメーン行事が盛大に繰り広げられた。茶屋前岸壁に接岸した大船渡丸の特設ステージでは、余興が行われ、地元出身や大船渡にゆかりある歌手、団体10組が演出し、地域の発展と復興に思いをこめた熱唱・熱演が続いた。
開催式のあと、夕方6時から茶屋前臨港道路で市民道中踊りがスタートし、28団体・1324人が浴衣やハッピに身を包んで参加し、「氣仙甚句囃子」「おおふなと椿音頭」を披露。中心市街地に笛や太鼓の音が響き渡り、まつりは熱気にあふれた。
臨海道路には、夢あかりと走馬灯が設置され、夜の訪れともに点灯。柔らかな光が幻想的な世界をつくりながら、海のまちを優しく照らした。フィナーレを飾ったのは花火大会。大船渡湾内の台船からは、8000発の花火が打ち上げられ、締めくくりには延長50メートルの花火「ナイアガラの滝」を満喫した。 おわり
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◇コラム知技研(79) 「本棚の一冊から(39)」 【遠藤恭一】
=『マルクス・ガブリエル欲望の時代を哲学する』丸山俊一著=
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著者丸山氏の名前の下にNHK「欲望の時代の哲学」製作班とある。NHK出版新書から
昨年12月に出版された新書版である。実は大分前このシリーズのTV番組を見ていてガブリエル氏の発言に興味を持っていた。ドイツの新進気鋭の哲学者として紹介された氏の発言はかなりユニークでその時の対談相手はチェコの経済学者トーマス・セドラチェックであったと記憶している。扨、本題だがこの本はガブリエルが来日した際に同行して日本各地を回った中で彼が発言した内容を記述したものである。第1章は彼の日本の印象(来日は今回が初めてではない)第2章は第二次世界大戦後の世界で哲学がどう推移して来たかを講座形式で語ったものである。第3章は日本のロボット工学の第一人者石黒浩阪大教授との対話、終章は著者が捉えたガブリエルの哲学についてである。特に第1章の日本分析が秀逸であると思う。東京の鉄道網(地下鉄・私鉄を含む)の正確性は彼の眼には、人間がシステムを維持しているのではなく、電車システムの為に存在する人間と映る様だ。
日本社会の中で彼は「日本は明らかに締まったソーシャルネット、社会的な網がある。だから君が動けるスペースは非常に限られている。そしてそこから抜け出せば、基本的に、社会でのメンバーシップを失う。そして人々はそれを恐れる。それはまさに日本社会における非民主主義的な要素だ」こうした哲学的な指摘が随所に現れ、なるほどと思える点も多い。
更にインターネットの使用について指摘する点は、インターネットは昔の電話帳の様な使用方法であれば問題ない。「人間の道徳は、他人の身体的な存在に就いての経験によって左右される。人間の現実は生物学的な現象だ。ある一定の距離に対応したものだ。その距離から離れれば道徳はなくなる。だから法律が必要だ」デジタル時代だからこそ哲学が必要だと語る。第2章では「哲学は時代との格闘だ」とのタイトルで第二次世界大戦以降の哲学の展開が時代の変遷と共に分析されている。その背景には認識論抜きでは哲学は語れないとの認識がある。第二次世界大戦の反省から出発した実存主義、そのあとの構造主義からポスト構造主義へ。その先に生まれたのが新実在主義という。そうした時間の流れの技術の発展の中から哲学が歩んで来た道が示されている。書かれた文章は決して難解ではないが、内容はかなり難しい。難しい言葉が使われていないだけに判り易いと思ったが何度か読み返さないと意味を把握できない。不思議な本であるとの印象もある。
例えば「真実は理解できると仮定して、実際に何が起こっているのかを理解し始めることを勧めたい。なぜならば、僕らがどうすべきかに関する道徳的事実を含めて、事実は存在する。そしてこれらの事実は普遍的だ。それらは全ての人間に開かれている」この文章は言葉としては難しくないが、意味を把握するのは結構難しい。「僕らは今深い危機の時代の中にいる。民主主義、気候変動、中東の破滅の可能性などの危機だ。危機の時代だ。危機の時代に何が起こるかと言うと新しい観念が必要になってくる。我々は今何が起こっているかを理解する必要が大いにある」 我々は今こそ本当の事実を見つけ出す為に人類全体として力を合わせ始めなければならない。経済的事実、宇宙的事実、道徳的事実。我々の知っている事実を結び付けることによって現実がどの様なものであるかを知ることが出来る。そこに新たな希望が見いだせる。全ては事実か出発する。我々の生きる社会での事実の追求こそが、人類の希望だというメッセージである。フェイクニュースがあふれ、左右どちらにも偏らない事実を求めること自体が限りなく難しい時代の中で我々の行く道は険しいと言わざるを得ない。
つづく
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◇宇宙川柳 ・手前の太道(143) 【家元東柳】
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芭蕉の築いた俳句の世界「奥の細道」をも包摂した広大で自由な川柳宇宙を築こうと思い、「手前の太道(ふとみち)」としています。以下の15句は毎月20年間私、家元東柳の作品です。お楽しみ下さい。
時に自作の川柳に笑い泣き、近頃は時々創りながら悲しくて泣いています。
無理にうなづき 残る首痛
衣更え貴女も恋人変えますか?
キャリア―も10連休でノンキャリア
紙風船強く叩くと破れかね
生命力溢れる悟り有りますか
能面に溜まった嫉妬で剥がれない
ハウスメーカーぶら下がりのくせ高すぎる
一瞬で老人とバレ席立たれ
言葉あり 人がいるから下卑て来る
ただスマン愛しい妹子と金婚に
★おまけの戯れ句、狂句、破礼句
再検査結果安心ガンモドキ
初孫はまさに手土産里帰り 土に産れて土に報告
大統領ボタンを押して箱舟に
文在氏次に狙うは北首相
植輪の目あれはマンモス見ている目
★リメールコーナー 遠藤智様
「ちょっと前先に移民し銃乱射」家元8月号
「先住民といえども、同じ移民ではないか。場所取りみたいな せこいこと考えるな。」(遠藤智様)
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㈱東綜合設計事務所 代表取締役 東 直彦
東京都中野区中野3-2-1 リバース中野601
TEL:03-3384-9301 FAX:03-3384-9380
E-mail:higaships@siren.ocn.ne.jp
URL :http://www.higaship.com
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◇ 田舎暮らし(196)<真夏の農作業で> 【中野信吾】
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高齢化に伴って定期的に帰省する回数が減ってきた。それも田舎にある家屋と農地を維持・管理するために義務付けていた「定期便」だったが、だんだんとひと月に帰省する回数に間隔が開くようになってきた。この夏の天候の不順もそれに拍車をかけたようだ。最近、自動車の「免許証更新のための検査と講習」の通知が手元に届いた。速やかに手続きをしてくれというもの。高齢者の事故はすぐ話題になりやすく、免許証を返上すれば即、生活の手段を奪われて八方塞がりとなってしまう。どうしたものかと頭を抱えている始末。
雨上がりの庭で草取りをした。植木の間が雑草で覆われていたので取り払って、少しでも風通し良くしようと作業を進めた。その時、草藪の中にベゴニアの葉だけを食い荒らしている箇所が見付かった。今までこんな場景は見たこともなかった。少し離れた庭のぬかるみの一箇所に約7㎝もある動物の蹄跡が見付かり、丸い糞が落ちていた。犯人は鹿とわかった。周囲に餌となる物が少なくなって人家近くまで徘徊するものの、今までは庭の中まで入って来なかった。集落の人口減は動物の行動範囲を広げているように思える。
今年もブルーベリーの灌木が枝も折れんばかりにたわわに実をつけた。5㎏以上の収穫があって、ジャムに加工した。一年中重宝している。毎年、年末には木の周りを手入れして、結実のお礼にと追肥をしておく。人目につきやすい路地の入口に植わっている丈の低い二本の灌木だが、手入れ次第で相応の見返りが頂戴できる正直な木でもある。
7月は雨が降り続き、畑の手入れができず草茫々だった。そのためにジャガイモの土寄せができずに放置されたままだった。手入れができないのだから、イモだってあまりできが良くないだろうと思っていた。草取りなどで畑は踏み固められているために硬い。その上、スギナの根が張り巡っていて取り除くのに余計な手間がかかってしまった。この雑草の地下茎は残っていると増殖が速い。除草剤は使いたくない。残暑の中での草取りとイモ掘りは時間がかかる作業となった。わずかな量のジャガイモだが、年寄二人で毎年処理できず残ってしまう。春先の新ジャガの出回るころは芽の出たイモ処理は頭を悩ませる。今年は手入れができなかった割にイモのできはよかったようだが、その先はまた繰り返されるのか杞憂するばかりである。
畑の草取りをした後、秋野菜の種を蒔いてきた。これからの天候の状態では、雨が多ければ雑草の伸びが早まり草取りの手間を要する。それに今までのように頻繁に帰省できる回数があるかどうか。高齢化とともに免許証返上はいろいろな制約が重くのしかかる。思案に明け暮れるこの頃だ。
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→ 早稲田イヴェント
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◇古希のたわごと(5) =ゴルフ練習 中野時代その2= 【石川啓司】
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前回では、手打ちといわれるスイングの中で『キャスティング』を自覚したことで、それを矯正したいと、ゴルフ練習の必要性に目覚めたことを述べました。
自分のスイングの悪さ、ミスの原因の一つは、まずキャスティングにあるということをはっきりと分かったことが、中野時代の収穫でした。
ところが、何年かそこでレッスンを受けたのですが、『キャスティング』のスイングは一向に治らない。
クラブの先がボールに届く前に手を使ってしまう。結果として、ザックリ、トップが起こる。手は器用だから、手が出しゃばるとろくでもない。クラブの先の行方よりボールの行方が気になる。
バックスウイングからダウンスイングまで手と身体がばらばら、手の解きが早い、タメが出来ていない。
ボールを打った瞬間に、目はボールを追うから、ヘッドアップする。それでインパクト時にヘッドの方向性がまちまちだから、スライス、フックが起こる。ミスの続出だ。
「幸運」を求めてゴルフを続ける。チップインをするかも知れない。ホールインワンをするかも知れない。ボールの行方は、「ボールに聞いてくれ」という運に頼るの世界では、120切りはおぼつかない。
ホールに近づけたいという一心で、強く打つ。バランスを崩して、ミスをする。ショートの池越えでつまずく。寄せがぜんぜん。パットが入らない。それでは、120を切れない時代が続く。
「ボールを曲げたくない」という願望、ミスをしたくないという気持ちがある。これを「真っ直ぐ打つ」にはどうするか、この技術を会得せずに、毎回、ミスをしないようにするという固定概念に縛られては、ラウンドは楽しくなく、ミスを呪い、運を待ち望む。これでは、上達の楽しみから、縁の遠い話になります。
ゴルフは、より遠くに飛ばすだけのスポーツではありません。狙ったところに飛ばすスポーツです。方向性と距離をコントロールすることが必須であるということです。
そこまで気がついていて、ではどうするか。真っ直ぐに飛ばすことが出来るよう練習することです。
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◇よろず評論(60) < 三陸・大船渡夏まつり > 【鈴木迪雄】
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「海の祭典」とも呼ばれる岩手県大船渡市の夏を代表する一大イベント。三陸・大船渡夏まつりが8月3日に行われた。
東日本大震災からの復興が進むなか、9年ぶりに大船渡の中心市街地に戻ってきた夏まつり。地元の人々は中心部で再び開催できることを喜びながらメーン行事の市民道中踊りや花火大会などを楽しみ、地域の元気とこれまでの感謝を発信した。
東日本大震災前、まつりの会場は大船渡駅前の目抜き通りで行われていた。しかし、同駅周辺地区は津波で甚大な被害を受けたため同駅付近の野々田岸壁港湾道路、市魚市場前を利用してきた。こうしたなか、今年3月末、大船渡周辺地区で行われていた土地基盤工事が完了。同まつり実行委は、9年ぶりに中心市街地で開催することを決めた。
今年の8月2日、海上七夕船団による大船渡湾内巡航で開幕。二日目の3日は、青空が広がる夏らしい天候と暑さのもとでメーン行事が盛大に繰り広げられた。茶屋前岸壁に接岸した大船渡丸の特設ステージでは、余興が行われ、地元出身や大船渡にゆかりある歌手、団体10組が演出し、地域の発展と復興に思いをこめた熱唱・熱演が続いた。
開催式のあと、夕方6時から茶屋前臨港道路で市民道中踊りがスタートし、28団体・1324人が浴衣やハッピに身を包んで参加し、「氣仙甚句囃子」「おおふなと椿音頭」を披露。中心市街地に笛や太鼓の音が響き渡り、まつりは熱気にあふれた。
臨海道路には、夢あかりと走馬灯が設置され、夜の訪れともに点灯。柔らかな光が幻想的な世界をつくりながら、海のまちを優しく照らした。フィナーレを飾ったのは花火大会。大船渡湾内の台船からは、8000発の花火が打ち上げられ、締めくくりには延長50メートルの花火「ナイアガラの滝」を満喫した。 おわり
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◇コラム知技研(79) 「本棚の一冊から(39)」 【遠藤恭一】
=『マルクス・ガブリエル欲望の時代を哲学する』丸山俊一著=
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著者丸山氏の名前の下にNHK「欲望の時代の哲学」製作班とある。NHK出版新書から
昨年12月に出版された新書版である。実は大分前このシリーズのTV番組を見ていてガブリエル氏の発言に興味を持っていた。ドイツの新進気鋭の哲学者として紹介された氏の発言はかなりユニークでその時の対談相手はチェコの経済学者トーマス・セドラチェックであったと記憶している。扨、本題だがこの本はガブリエルが来日した際に同行して日本各地を回った中で彼が発言した内容を記述したものである。第1章は彼の日本の印象(来日は今回が初めてではない)第2章は第二次世界大戦後の世界で哲学がどう推移して来たかを講座形式で語ったものである。第3章は日本のロボット工学の第一人者石黒浩阪大教授との対話、終章は著者が捉えたガブリエルの哲学についてである。特に第1章の日本分析が秀逸であると思う。東京の鉄道網(地下鉄・私鉄を含む)の正確性は彼の眼には、人間がシステムを維持しているのではなく、電車システムの為に存在する人間と映る様だ。
日本社会の中で彼は「日本は明らかに締まったソーシャルネット、社会的な網がある。だから君が動けるスペースは非常に限られている。そしてそこから抜け出せば、基本的に、社会でのメンバーシップを失う。そして人々はそれを恐れる。それはまさに日本社会における非民主主義的な要素だ」こうした哲学的な指摘が随所に現れ、なるほどと思える点も多い。
更にインターネットの使用について指摘する点は、インターネットは昔の電話帳の様な使用方法であれば問題ない。「人間の道徳は、他人の身体的な存在に就いての経験によって左右される。人間の現実は生物学的な現象だ。ある一定の距離に対応したものだ。その距離から離れれば道徳はなくなる。だから法律が必要だ」デジタル時代だからこそ哲学が必要だと語る。第2章では「哲学は時代との格闘だ」とのタイトルで第二次世界大戦以降の哲学の展開が時代の変遷と共に分析されている。その背景には認識論抜きでは哲学は語れないとの認識がある。第二次世界大戦の反省から出発した実存主義、そのあとの構造主義からポスト構造主義へ。その先に生まれたのが新実在主義という。そうした時間の流れの技術の発展の中から哲学が歩んで来た道が示されている。書かれた文章は決して難解ではないが、内容はかなり難しい。難しい言葉が使われていないだけに判り易いと思ったが何度か読み返さないと意味を把握できない。不思議な本であるとの印象もある。
例えば「真実は理解できると仮定して、実際に何が起こっているのかを理解し始めることを勧めたい。なぜならば、僕らがどうすべきかに関する道徳的事実を含めて、事実は存在する。そしてこれらの事実は普遍的だ。それらは全ての人間に開かれている」この文章は言葉としては難しくないが、意味を把握するのは結構難しい。「僕らは今深い危機の時代の中にいる。民主主義、気候変動、中東の破滅の可能性などの危機だ。危機の時代だ。危機の時代に何が起こるかと言うと新しい観念が必要になってくる。我々は今何が起こっているかを理解する必要が大いにある」 我々は今こそ本当の事実を見つけ出す為に人類全体として力を合わせ始めなければならない。経済的事実、宇宙的事実、道徳的事実。我々の知っている事実を結び付けることによって現実がどの様なものであるかを知ることが出来る。そこに新たな希望が見いだせる。全ては事実か出発する。我々の生きる社会での事実の追求こそが、人類の希望だというメッセージである。フェイクニュースがあふれ、左右どちらにも偏らない事実を求めること自体が限りなく難しい時代の中で我々の行く道は険しいと言わざるを得ない。
つづく
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
◇宇宙川柳 ・手前の太道(143) 【家元東柳】
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
芭蕉の築いた俳句の世界「奥の細道」をも包摂した広大で自由な川柳宇宙を築こうと思い、「手前の太道(ふとみち)」としています。以下の15句は毎月20年間私、家元東柳の作品です。お楽しみ下さい。
時に自作の川柳に笑い泣き、近頃は時々創りながら悲しくて泣いています。
無理にうなづき 残る首痛
衣更え貴女も恋人変えますか?
キャリア―も10連休でノンキャリア
紙風船強く叩くと破れかね
生命力溢れる悟り有りますか
能面に溜まった嫉妬で剥がれない
ハウスメーカーぶら下がりのくせ高すぎる
一瞬で老人とバレ席立たれ
言葉あり 人がいるから下卑て来る
ただスマン愛しい妹子と金婚に
★おまけの戯れ句、狂句、破礼句
再検査結果安心ガンモドキ
初孫はまさに手土産里帰り 土に産れて土に報告
大統領ボタンを押して箱舟に
文在氏次に狙うは北首相
植輪の目あれはマンモス見ている目
★リメールコーナー 遠藤智様
「ちょっと前先に移民し銃乱射」家元8月号
「先住民といえども、同じ移民ではないか。場所取りみたいな せこいこと考えるな。」(遠藤智様)
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㈱東綜合設計事務所 代表取締役 東 直彦
東京都中野区中野3-2-1 リバース中野601
TEL:03-3384-9301 FAX:03-3384-9380
E-mail:higaships@siren.ocn.ne.jp
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◇ 田舎暮らし(196)<真夏の農作業で> 【中野信吾】
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高齢化に伴って定期的に帰省する回数が減ってきた。それも田舎にある家屋と農地を維持・管理するために義務付けていた「定期便」だったが、だんだんとひと月に帰省する回数に間隔が開くようになってきた。この夏の天候の不順もそれに拍車をかけたようだ。最近、自動車の「免許証更新のための検査と講習」の通知が手元に届いた。速やかに手続きをしてくれというもの。高齢者の事故はすぐ話題になりやすく、免許証を返上すれば即、生活の手段を奪われて八方塞がりとなってしまう。どうしたものかと頭を抱えている始末。
雨上がりの庭で草取りをした。植木の間が雑草で覆われていたので取り払って、少しでも風通し良くしようと作業を進めた。その時、草藪の中にベゴニアの葉だけを食い荒らしている箇所が見付かった。今までこんな場景は見たこともなかった。少し離れた庭のぬかるみの一箇所に約7㎝もある動物の蹄跡が見付かり、丸い糞が落ちていた。犯人は鹿とわかった。周囲に餌となる物が少なくなって人家近くまで徘徊するものの、今までは庭の中まで入って来なかった。集落の人口減は動物の行動範囲を広げているように思える。
今年もブルーベリーの灌木が枝も折れんばかりにたわわに実をつけた。5㎏以上の収穫があって、ジャムに加工した。一年中重宝している。毎年、年末には木の周りを手入れして、結実のお礼にと追肥をしておく。人目につきやすい路地の入口に植わっている丈の低い二本の灌木だが、手入れ次第で相応の見返りが頂戴できる正直な木でもある。
7月は雨が降り続き、畑の手入れができず草茫々だった。そのためにジャガイモの土寄せができずに放置されたままだった。手入れができないのだから、イモだってあまりできが良くないだろうと思っていた。草取りなどで畑は踏み固められているために硬い。その上、スギナの根が張り巡っていて取り除くのに余計な手間がかかってしまった。この雑草の地下茎は残っていると増殖が速い。除草剤は使いたくない。残暑の中での草取りとイモ掘りは時間がかかる作業となった。わずかな量のジャガイモだが、年寄二人で毎年処理できず残ってしまう。春先の新ジャガの出回るころは芽の出たイモ処理は頭を悩ませる。今年は手入れができなかった割にイモのできはよかったようだが、その先はまた繰り返されるのか杞憂するばかりである。
畑の草取りをした後、秋野菜の種を蒔いてきた。これからの天候の状態では、雨が多ければ雑草の伸びが早まり草取りの手間を要する。それに今までのように頻繁に帰省できる回数があるかどうか。高齢化とともに免許証返上はいろいろな制約が重くのしかかる。思案に明け暮れるこの頃だ。
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